金峰山頂から金峰平野を望む
上古時代 南薩地方（現在の南さつま市）一帯は、吾田国長屋笠沙の碕と呼ばれ、古事記・日本書紀による天孫降臨の地とされ、その中心地が阿多附近と云われている。
皇紀二千六百年（昭和１５年）を迎えて瓊久杵の命（ニニギノミコト）の妃となられた木花咲耶姫の父 大山祗命の聖蹟（鹿児島県指定蹟）が顕彰された。
また高橋の「くらん峠」には安閑天皇の時代に謄年部屯倉が置かれたと伝えられている。 一方、田布施の地名は、当時鳥獣の害を防ぐために作られたタブセ（番人小屋）から出たとも伝わる。
また下って、推古天皇の時代には、従三位兼太宰大貮蔵人頭と云う者が、阿多郡高橋郷高江崎に下って来て、中国と交易し、財力、武力を誇ったと云う。
保元平治の頃には、肥前平氏の流れを汲むと云う薩摩権守阿多平四郎忠景が貝殻ヶ崎にあって、薩摩はもとより大隅国まで勢威を振い、源為義の子の鎮西八郎為朝に娘を嫁がせて、南九州地方に君臨していたが、余りにも暴力が過ぎて、平家の追討を受け築後守家貞のため貴海島に落ちたと云われている。
金峰山・歴史交流館金峰を背景にした木花咲耶姫像と、歴史交流館内の案内（必見の価値があります。）
宗家は建久６年１１月に阿多郡を二分して、北方（田布施）を嫡子家高に、南方（阿多）を宗景に譲った。 寛元４（１２４５）年８月阿多北方地頭家高入道行願は、新田宮神王面を破損したことで、翌年宝治元（１２４７）年 新田宮権執員永慶に訴えられて改易させられた。
宝治２年二階堂常陸入道行久が、阿多北方地頭に任じられ、正応６（１２９３）年 異国船警備の必要もあり、子の泰行が母の忍照尼と共に高橋に下って来た。 泰行の孫に至り高橋から池辺の牟礼ケ城に移る。
応永１３（１４０６）年 二階堂行貞は伊作義久と戦って敗れ、市来に逃れ、ここに二階堂氏は滅んだ。 そして北方は伊作氏が一時領有することになった。 阿多南方の鮫島氏は南北朝時代、島津の一族伊集院氏と共に、相協力して南朝に尽くしたが、応永２８（１４２１）年頃に至り、遂に島津氏のもとに組み込まれてしまった。
その後、阿多、田布施、高橋は、島津九代忠国の長子友久の領するところとなり、田布施の亀ケ城にあったが、子の運久が伊作家の島津善久の未亡人を娶る時の条件が、善久の遺子忠良をして相州家を継がせることであったので、運久は永正９（１５１２）年正月調所恒房が阿多城の番にあるのを憤り、同年３月これを襲って取り返し、亀ケ城を忠良に譲り、自らは阿多城に隠居した。 後、忠良の長子貴久は島津本家を継ぎ三州を平定した。 これより阿多、田布施、高橋、伊作は島津藩の直轄地となり、地頭が置かれて維新を迎えた。
高橋部落にある我鹿屯倉碑・万之瀬川下流域から眺める長屋の峰
大昔、金峰山の神様と、野間岳の神様が戦いをした時、金峰山の神様はススキの穂を矢のように投げられた。 金峰山から投げたススキが野間岳の神様の目にささって野間の神様は片目になった。 また野間あたりの伝説では、野間岳の神様の投げた石が金峰山の肩にあたって、（三の嶽の方）そちらの肩が落ちていると云う話がある。
その投げた石が金峰山まで届かず、途中で落ちたのが矢石だと云う。 その矢石は、高橋の室屋商店前の曲がり角に一基、尾下の農村研修センター前道路に一基、中津野の加治屋英二氏所有の山の下に一基、計三基ある。
尚、吹上町入来の畑の中に一基あると云う。（上図は、尾下矢石、高橋矢石、入来矢石です。）
※推測の域を出ませんが、神様の戦いとは、瓊久杵命（ニニギノミコト）と大山祗命の神様、あるいは海幸彦と山幸彦の争いのことでしょうか・・・
金峰山から最も遠くにある入来矢石： 入来矢石の近くにある伊作川河口、河口にある吹上浜から野間岳・金峰山を望む
文献〔吹上典（吹上町の百科事典）〕より転記‥
吹上地区西原の畑に刺さる石。 金峰山の神様と野間岳の神様が争った際に、野間岳の神様が金峰山の神様に向かって投げたものが外れてこの地に刺さったと云われており、矢石を勝手に掘り起こすと病気になると恐れられていた。 因みに金峰山の神様はススキを投げて反撃したらしい。 金峰山神社の神域を示す膀示石（ぼうじいし・境界石）との説もある。
＜出典＞
本頁の掲載情報は、下記資料を参考とさせて頂きました。
金峰郷土史 上巻 編集者： 金峰町郷土史編纂委員会
発行者： 金峰町長 児島 高美
発行日： 昭和６２年３月２０日
南さつま市中央図書館 所蔵
吹上典 吹上町の百科事典
監修・執筆・編集： 博多 和宏
吹上ワンダーマップ１０周年記念冊子
発行日： 平成３０年（２０１８）１月２５日